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Deep Dive

AIトークン消費量が18ヶ月で25,000%増——でもその数字は「思考の空回り」と「エージェントの無駄話」によって実態から乖離している

9月17日、The Decoderが「OpenRouter's staggering token chart is the AI bubble debate in a single image」と題した記事を公開した。OpenRouterのトークン消費量が急増しているにもかかわらず、その数字が実際のAI利用拡大を正確に反映しているわけではないという実態について詳しく論じている。

9月17日、The Decoderが「OpenRouter's staggering token chart is the AI bubble debate in a single image」と題した記事を公開した。OpenRouterのトークン消費量が急増しているにもかかわらず、その数字が実際のAI利用拡大を正確に反映しているわけではないという実態について詳しく論じている。


18ヶ月で25,000%増——でもその数字は何を意味するか

開発者向けAIモデル統合プラットフォームのOpenRouterで、週次トークン消費量が2025年1月の0.5兆トークンから126.2兆トークンへ、約25,000%増加した。


OpenRouterにおける週次トークン使用量の推移 | 画像: Peter Walker / OpenRouter

グラフだけ見ればAI需要が爆発的に拡大しているように見える。だがこの数字は、実際の利用者数やビジネス価値の増加とは切り離して考える必要がある。トークンとはAIが処理するテキストの基本単位であり、車に例えるならガソリンに相当する。問題は、このガソリンの消費量が「実際に走った距離」ではなく、「エンジンが空回りした分」も含めてカウントされる構造になっている点だ。


トークン数が実態から乖離する構造的な理由

近年主流になっている「推論モデル(Reasoning Model)」は、最終的な回答を出す前に大量の「思考トークン」を内部で生成する。これがトークン消費量を押し上げる大きな要因の一つだ。

推論モデルとは、単純に次の単語を予測するのではなく、回答を導き出すまでの思考プロセス自体をステップ・バイ・ステップで展開するモデルを指す。例えばOpenAIのo3やAnthropicのClaude 3.7 Sonnetがこれにあたり、数学的推論や複雑なコーディングタスクで高い精度を発揮する一方、その「考える」プロセス自体がトークンとしてカウントされる。実際の利用者数がわずかに増えただけでも、消費トークン数は大幅に跳ね上がる構造だ。

さらに、最適化が不十分なエージェント型AIシステムも、無駄なトークンを大量に消費する原因となっている。エージェント型AIとは、複数のAIコンポーネントが連携しながらタスクを分担・実行する仕組みを指す。エージェント同士の中間的なやりとり——指示の受け渡し、状態の確認、結果の報告——がすべてトークンとしてカウントされるため、設計や実装の粗さがそのままトークン消費量の増大に直結する。

これら二つの要因——推論モデルの「思考の空回り」とエージェントの「無駄話」——が重なることで、トークン消費量は実際のビジネス価値や利用者数の成長を大きく上回るペースで増加する。


消費量トップとRevenue(収益)トップは別の顔

元記事によれば、OpenRouter上でのトークン消費量ランキングと収益ランキングの首位モデルは異なっている。消費量トップのモデルは、必ずしも最も多くのユーザーに使われているわけではなく、1プロンプトあたりの生成トークン数が多いことを反映しているにすぎない可能性がある。

一方、収益ランキングの首位は消費量ランキングと一致しない。これはトークン単価のモデル間差異を反映しており、「多く消費される=多く稼ぐ」という単純な関係が成立しないことを示している。

なお、元記事に登場するモデル名については、執筆時点(2026年9月)での公式情報との照合が困難なものも含まれており、読者は元記事の原文を直接参照して最新の表記を確認することを推奨する

中国勢の動きも見逃せない。Kimi、GLM、DeepSeekといった中国製モデルは、2026年に入って月次支出が10倍に増加している。ただしベースが小さいため、絶対値ではまだ差がある。


これはAIバブルの証拠か、それとも健全な成長か

この一枚のグラフが、現在のAIバブル論争を凝縮している。

楽観派は「トークン消費の急増はAI活用が実際に深化している証拠だ」と見る。悲観派は「Googleがトークン消費量を売上高の代わりに強調するように、この指標はビジネス実態を見えにくくする役割を果たしている」と指摘する(関連記事:AI bubble debate — Google prefers to mention token consumption rather than sales figures)。

技術的観点から見れば、トークン消費量はシステムの非効率性を含む指標だ。推論モデルや未最適化のエージェントが普及するほど、実態とのかい離は大きくなる。投資判断や市場規模の評価にこの数字を用いるなら、構造的な「水増し」要因——推論モデルの内部思考トークンとエージェントの中間通信トークン——を差し引いて読む必要がある。トークン消費量はAI産業の活況を示す一つの指標ではあるが、それ単体でビジネス価値や需要の実態を測る物差しとして使うには限界がある、というのがこの記事の核心的なメッセージだ。


詳細はOpenRouter's staggering token chart is the AI bubble debate in a single imageを参照していただきたい。