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Deep Dive

4つのAIチャットボットに「次の命令」を問い合わせながら自律動作するマルウェアが発見 — 人間のオペレーターなしで動くC2システムの登場

9月23日、TechSpotが「Researchers found malware that uses four different AI chatbots to run itself」と題した記事を公開した。この記事では、4つのAIチャットボットを組み合わせて自律的に動作する新種マルウェア「CLOSEDQUORUM」をCisco Talosの研究者が発見したことについて詳しく紹介されている。

9月23日、TechSpotが「Researchers found malware that uses four different AI chatbots to run itself」と題した記事を公開した。この記事では、4つのAIチャットボットを組み合わせて自律的に動作する新種マルウェア「CLOSEDQUORUM」をCisco Talosの研究者が発見したことについて詳しく紹介されている。


CAIRNフレームワークがもたらした発見

CLOSEDQUORUMの発見は、Cisco Talosが開発した新しいオープンソースフレームワークCAIRN(Cognitive Artifact Intelligence Research Network)によってもたらされた。CAIRNはマルウェアサンプル内のメタデータや属性を解析し、AIサービスとの統合に特有の「痕跡(アーティファクト)」を検出する仕組みだ。

フレームワークの開発を主導したRyan Fetterman研究員はWiredに対して次のように語っている。

「AIの統合には、指紋のような痕跡が残る。それがサンプルを追跡・分類し、何が起きているかを把握するシグナルになる」

CAIRNは類似した特徴を持つアーティファクトをグループ化し、攻撃者がどのようにLLMをマルウェアやC2オペレーションに組み込んでいるかのパターン分析を可能にする。

4つのLLMに「次の行動」を問い合わせるマルウェア

CLOSEDQUORUMの最大の特徴は、LLM(大規模言語モデル)をコード生成やフィッシング文面の作成といったサポート用途ではなく、攻撃インフラの制御系そのものとして組み込んでいる点だ。

このマルウェアは感染したWindowsマシン上で動作し、次にどのアクションをとるべきかをDeepSeek、Qwen、Mistral、Google Geminiの4サービスに問い合わせた上で判断する。さらに、そのうち1つのサービスが利用不能になっても、残りの3つに切り替えることで動作を継続できる冗長構成になっている。

また、Cisco Talosは「一度起動すると、人間のオペレーターがコマンドを送る経路が存在しない」と指摘している。従来のマルウェアに多いC2(Command and Control)サーバーへの依存を排除し、LLMのレスポンスを制御信号として使う構造だ。

Cisco TalosのMatt Olney上級ディレクターはこの変化を次のように表現した。

「最初、誰もがAIを生産性ツールとして見ていた。しかし今、AIは『運用化』されている。攻撃者にとっては、バックエンドに賢いボックスを置くことで、より多くのキャンペーンを走らせ、より多様なマシンを扱えるようになる」

目的はクレデンシャル窃取と暗号資産詐欺

研究者によると、CLOSEDQUORUMはログイン情報と暗号資産の窃取を目的として設計されている。また、Talosの調査では、本マルウェアのサンプルが2025年のクレジットカード詐欺に関連するサイバー犯罪フォーラム上の活動と同一のインフラ的特徴を共有していることが確認されている。ただし、誰が開発したか、実際の標的に使用されたかについては特定できていないとTalosは述べている。

「公開報告よりも実態は広い」

Fettermanは当初、AIを活用したマルウェアが急増すると予測していた。しかし約1年後に状況を確認したところ、公開文書に記録された事例は概ね9つの命名済みマルウェアファミリー(一部はPoC)にとどまっていた。

一方でCAIRNを使った独自調査では、さらに約20件のAI統合マルウェアのサンプルを追加で発見した。Fettermanはこれについて「活動の大半はまだ実験的だが、公開報告が捉えていないものが数多く存在する」と述べた。

なお、AIを組み込んだ先行事例としては、昨年7月にウクライナのCERT-UAがフィッシングキャンペーンと関連づけたLAMEHUGがある。このマルウェアはHugging Face APIを通じてQwen2.5-Coder-32B-Instructに接続してコマンドを取得する仕組みだった。CLOSEDQUORUMはこうした先行事例をさらに発展させ、複数LLMへの同時依存と完全な自律制御を実現した点で質的な飛躍を示している。

防御側への示唆

CLOSEDQUORUMの発見が重要なのは、人間のオペレーターを介さない自律的なC2システムという設計思想が明確になった点だ。LLMへの依存は検出・追跡の手がかりにもなりえるが、同時にマルウェアの冗長性と自律性を高める方向にも作用する。

防御の観点では、CAIRNのようなAIアーティファクト追跡フレームワークの活用が有効な初期手段となりうる。加えて、エンドポイント上での外部LLM APIへの不審な通信の監視や、MITRE ATT&CKフレームワークにおけるC2戦術の検出ルールの見直しも、この新しい脅威カテゴリへの対応として検討に値する。Talosは今後もCAIRNを通じた継続的なサンプル追跡を予定しており、AI統合マルウェアの全容解明に向けた調査を続けるとしている。

詳細はResearchers found malware that uses four different AI chatbots to run itselfを参照していただきたい。