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79年間誰も解けなかった「6次元球の複素構造問題」をAIが証明か — ただし100ページの証明文書は「ほぼ解読不能」

9月24日、Scientific American が「AI solves 79-year-old math mystery of six-dimensional spheres」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicのAI(Claude)が1947年から未解決だった「6次元球の複素構造問題」を証明したとされる件について詳しく紹介されている。

9月24日、Scientific American が「AI solves 79-year-old math mystery of six-dimensional spheres」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicのAI(Claude)が1947年から未解決だった「6次元球の複素構造問題」を証明したとされる件について詳しく紹介されている。


79年間誰も解けなかった問題

1947年、ドイツの数学者ハインツ・ホップ(Heinz Hopf)は高次元球に関する問いを立てた。「6次元球面に複素構造は存在するか?」というものだ。

「複素構造」とは、多様体(なめらかな形状を持つ空間)の各点の近傍に複素座標系を局所的に定義できる構造のことだ。より具体的には、実次元が偶数の多様体に対して、局所的に複素多様体と見なせる構造が入っているとき、その多様体は複素構造を持つという。2次元球面(普通の球の表面)はちょうど複素平面の1点コンパクト化として複素構造が存在することが知られており、それによって球面上の複雑な方程式を扱いやすい多項式方程式と結び付けるといった応用が可能になる。複素構造の有無は純粋数学において非常に重要な問いだ。

6次元球面($S^6$)は実次元が6の多様体であり、これに3次元複素多様体の構造が入るかどうか、というのがホップ問題の本質だ。ホップは高次元球の多くについて「複素構造は存在しない」と証明したが、6次元球だけは証明できなかった。以来79年にわたり、世界中の数学者が賛否両論の証拠を提示してきたが、決定的な証明は誰も達成できていなかった。


AnthropicのAIが証明を生成

数学者でありAnthropicに在籍するLevent Alpöge氏が、社内版の大規模言語モデル(LLM)Claudeを用いてこの問題に取り組んだ。Alpöge氏はすでに2つの新しい楕円曲線の発見でも成果を上げており、今回が初めてではない。

※元記事では「ヤコビアン予想の解決」についても言及があるとされるが、ヤコビアン予想はクレイ研究所未掲載ながら数十年来の未解決問題であり、解決の事実は現時点で独立した確認が取れていない。編集部では記載を控えた。

なお、Alpöge氏が証明文書を公開したのは2024年8月23日であり、元記事の公開日(9月24日)より約1ヶ月前のことだ。Scientific Americanの記事は、その間に数学コミュニティで進んだ検証の経緯を踏まえてまとめたものと理解されたい。

Alpöge氏は100ページを超える証明文書を公開した。AIが $S^6$(実6次元多様体)に対して3次元複素多様体としての構造——すなわち局所的に複素座標系が定義できる構造——を明示的に構成し、それが $S^6$ と位相同型であることを示したとされる証明だ。結論は「6次元球には複素構造が存在する」――つまり、ホップ問題への答えはYesということになる。

ただし、この証明はまだ査読を経ていない段階で公開された点に注意が必要だ。


LLMの証明が抱える透明性の問題

公開された文書は「ほぼ解読不能」と評された。LLMは些細な詳細に過剰な紙面を割く一方、重要なステップを読み飛ばすような説明をする傾向があるためだ。

ドイツ・マールブルク大学の数学者Ilka Agricola氏はこの点を鋭く指摘している。

「何回プロンプトを試みて結果に至ったのか、どの程度の人間による調整が必要だったのか、まったくわからない」

こうした懸念にもかかわらず、数学コミュニティは素早く動いた。公開から数日以内に複数の研究者が証明の再構成に取り掛かり、8月27日にはシカゴ・イリノイ大学のPhilip Engel氏がLLMの証明過程をより教育的に説明した文書を公開した。

さらにOpenAIの研究者Boris Alexeev氏が定理証明支援言語**Lean**を用いて証明をステップごとに形式検証した。形式検証とは、証明の各ステップをコンピュータが機械的にチェックし、論理的な欠陥がないかを確認するプロセスだ。人間が読んでも難解な証明であっても、Leanのような証明支援系を使えば各推論ステップの正しさを厳密に担保できる。今回のケースでは、「人間には読みにくいAI生成の証明」を機械的に検証するという意味で、この形式検証の役割は特に重要だ。

デューク大学の数学者Robert L. Bryant氏は「この構成は妥当であるという合意が形成されつつある」と述べている。


「新しい幾何学的対象」の誕生

Philip Engel氏は今回の成果についてこう語る。

「『新しい幾何学』の例はごく稀で、貴重なものだ。今や世界には新たな幾何学的対象が存在し、それを探求できる」

Alpöge氏はさらに別の難問にも取り組んでいる。数学者Tristan Buckmaster氏との共同研究で、クレイ数学研究所のミレニアム懸賞問題の一つであるナビエ・ストークス方程式の解決に向けて大きな進展を遂げたとされる。同問題ではOpenAIも最近解決を主張したと報じられている。

AIが数学研究の最前線で相次いで成果を上げているが、今回のケースが示すように、証明の透明性と検証プロセスの整備が今後の課題として浮上している。


詳細はAI solves 79-year-old math mystery of six-dimensional spheresを参照していただきたい。