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Deep Dive

クラウド不要、デバイスだけでユーザーを「理解」するAI層 — Liquid AIがSnapdragon上でパーソナルコンテキストを実現

9月25日、The Next Webが「Liquid AI puts a personal context layer for agents on Snapdragon」と題した記事を公開した。スマートフォンやPCがクラウドにデータを送ることなく、デバイス単体でユーザーの行動・好み・ルーティンを学習し続ける——Liquid AIが発表したLiquid Contextは、そのような「プライバシーを手放さずにAIをパーソナル化する」という、エッジAIの核心を突く仕組みだ。

9月25日、The Next Webが「Liquid AI puts a personal context layer for agents on Snapdragon」と題した記事を公開した。スマートフォンやPCがクラウドにデータを送ることなく、デバイス単体でユーザーの行動・好み・ルーティンを学習し続ける——Liquid AIが発表したLiquid Contextは、そのような「プライバシーを手放さずにAIをパーソナル化する」という、エッジAIの核心を突く仕組みだ。


デバイス上でユーザーを「理解」するコンテキスト層

Liquid AIは2023年にMITからスピンアウトした企業で、データセンターではなくスマートフォン・ノートPC・車・ロボット向けのAIモデルを開発している。

同社がQualcommのSnapdragon Summit(2025年9月、マウイ島で開催)で発表したLiquid Contextは、ユーザーの日常的なルーティン・好み・ニーズをデバイス上のシグナルから学習し、そのプロファイルを常時更新するソフトウェア層だ。

処理は**QualcommのHexagon NPU**(Snapdragonに搭載されたAI専用のチップブロック)上でバックグラウンド動作する。ユーザーのパーソナルコンテキストはデバイス上に留まり、クラウドモデルが更新のたびに全データを処理する必要がない点が設計上の肝だ。

Liquid Contextは、Liquid AI自身のLiquid Agentや他社のエージェントに対して、ユーザーが許可した範囲の情報だけを渡す。エージェント自体はデバイス上でもクラウドでも、あるいはその両方で動作できる。

同社CEOのRamin Hasani氏はこう述べている。

「パーソナルAIは、あなたがどのように生活し、何をいつ必要としているかを理解することから始まる」

具体的なユースケース(例示)

Liquid AIは3つのユースケース例を挙げている(同社は「illustrative=例示的なもの」と断っている)。

  • 子供の早退連絡: メッセージで子供が体調不良だと通知が来ると、エージェントがカレンダーを確認し、移動可能なミーティングを特定して、ユーザーが承認するだけの下書きメールを作成する。
  • ランニング後の車内演出: スマートウォッチが自己ベストを記録すると、車に戻った際にカーエージェントが祝福し、好みの温度に車内を調整する。QualcommはすでにBMWと大型の車載コンピュータ供給契約を締結しており(2024年7月)、この連携の現実味は高い。

Qualcommとのビジネス関係

デバイスメーカーはLiquid Contextを標準機能として組み込めるほか、Liquid Agentをライセンス取得することも可能だ。Liquid Agentはパラメータ数26億のLFM2.5-2.6Bモデルをベースとし、Hexagon NPU向けに最適化されている。

両社は「追加の協業機会を模索中」としているが、具体的なデバイスメーカー名は現時点で非公表だ。

Qualcommはデータセンター向けチップも展開しており、Amazon AWSとの連携も進めている。

翌日公開:ビジョンモデル向けSpeculative Decodingドラフト

発表の翌日(木曜日)、Liquid AIはLFM2.5-VL-3Bのドラフトモデルを公開した。このモデルはテキストに加えて画像も入力として処理できるビジョンモデルであり、Hugging Faceから無料でダウンロード可能だ。

高速化の手法はSpeculative Decoding(投機的デコーディング)と呼ばれるものだ。仕組みはシンプルで、小さなドラフトモデルが次の数単語を予測し、メインモデルが一括検証することで、品質を落とさずに出力を高速化する。

  • ドラフトモデルのパラメータ数は約2億8000万
  • モデルサイズの増加は8.9%
  • M5 Max MacBook Proでデコード速度最大3.13倍、完全な応答生成は最大2.62倍高速化
  • Nvidia H100 GPUでデコード速度最大2.66倍、応答生成は最大2.27倍高速化
  • トレーニングはAMDハードウェアのみで実施

ただし、同社自身が注意点を明記している。画像やプロンプトの読み込みフェーズにはSpeculative Decodingの恩恵がなく、エッジデバイスではこのフェーズが総処理時間に占める割合が大きいため、実際の体感速度向上は数字ほど大きくないケースが多い。


詳細はLiquid AI puts a personal context layer for agents on Snapdragonを参照していただきたい。