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PMの年収は3000万円、エンジニアは上限なし! SI後発のSHIFTだからできる「人月」を突破したAIモダナイゼーション事業

「日本のIT企業で年収3000万円」——この報酬は外資系にしか存在しないと感じてきた数字だろう。だが株式会社SHIFTは、2026年に本格始動したAIモダナイゼーション(レガシーシステムをAIで最新のシステムへ作り替える取り組み)事業で、その常識に挑んでいる。PMには3000万円、貢献するエンジニアには上限を設けない。 後発でSIビジネスに参入した同社が、なぜAI時代に高付加価値SI事業を実現できるのか。AI Professionals 編集長の白石俊平が、AIモダナイゼーション事業を率いる佐藤章太朗氏と、テクノロジーマネージャーの江口昌宏氏に聞いた。AIを活用しても見積もりが下がらないSIビジネスAI Professionals 編集長 白石俊平(白石):率直に伺いますが、日本のSIerで「PMの年収は3000万円、エンジニアは上限なし」と言われても、にわかには信じられません。これは、本気で掲げていらっしゃる目標なのでしょうか。SHIFT 佐藤章太朗(佐藤)氏:はい、本気で目指しています。出発点はとてもシンプルで、優秀な人材が次々と外資系へ移ってしまう現状が、率直に言って悔しいんです...

「日本のIT企業で年収3000万円」——この報酬は外資系にしか存在しないと感じてきた数字だろう。だが株式会社SHIFTは、2026年に本格始動したAIモダナイゼーション(レガシーシステムをAIで最新のシステムへ作り替える取り組み)事業で、その常識に挑んでいる。PMには3000万円、貢献するエンジニアには上限を設けない。 後発でSIビジネスに参入した同社が、なぜAI時代に高付加価値SI事業を実現できるのか。AI Professionals 編集長の白石俊平が、AIモダナイゼーション事業を率いる佐藤章太朗氏と、テクノロジーマネージャーの江口昌宏氏に聞いた。

AIを活用しても見積もりが下がらないSIビジネス

AI Professionals 編集長 白石俊平(白石):率直に伺いますが、日本のSIerで「PMの年収は3000万円、エンジニアは上限なし」と言われても、にわかには信じられません。これは、本気で掲げていらっしゃる目標なのでしょうか。

SHIFT 佐藤章太朗(佐藤)氏:はい、本気で目指しています。出発点はとてもシンプルで、優秀な人材が次々と外資系へ移ってしまう現状が、率直に言って悔しいんです。 日本のエンジニアが、GoogleやAWSといった外資系プラットフォーマーへどんどん流れていっています。その一番大きな理由は、やはり給与です。従来型のSIerの給与モデルでは、外資と水準が違いすぎて、そもそも勝負にならないのが実情です。

中央がSHIFT AIモダナイゼーション事業部 事業部長 兼 戦略営業統括部 統括部長 佐藤章太朗氏、右がSHIFT AIモダナイゼーションサービス部 AIストラテジーグループ テクノロジーマネージャー 江口昌宏氏、左がHajimari AI Professionals編集長 白石俊平

白石:その、優秀な人材が外資へ流れていく図式そのものを変えたい、という挑戦なのですね。具体的には、どうやって報酬を引き上げるのでしょうか。

佐藤氏:まずは、外資系プラットフォーマーと同等の水準まで、給与のベースを引き上げます。そのうえに、生み出した価値に応じた還元を上乗せしていく、という設計です。3000万円と申し上げているのはPM(プロジェクトマネージャー)の給与水準です。PMに求められるのは純粋な技術力ではなく、「プロジェクトをなんとかやりきる推進力」なんです。一方で、アーキテクトのように技術で価値を出す人には、上限を設けずに報いたいと考えています。これはもちろんPMを軽視しているわけではなく、役割によって求められる価値の種類が異なり、それぞれの生み出す価値に応じた適切な報酬を実現したいという思いからです。

白石:それだけの報酬を実現するには、相応の原資が必要になります。どこから生み出すのでしょうか。

佐藤氏:ここが本質なのですが、SIというビジネスの構造そのものを変えなければ実現できません。 従来のSES(技術者の労働力を提供する契約形態)では、プロジェクトが失敗しても儲かってしまいます。1人月100万円で、うまくいかずにプロジェクトが延期されれば、私たちSIの売上は毎月積み上がっていきます。結果的にベンダーは儲かり、お客様だけが損をしてしまう構造なんです。この「遅延するほど儲かる」構造を壊さない限り、頑張った人が報われる世界は実現できません。

SHIFT 佐藤章太朗氏

これに対しSHIFTでは、プロジェクトを完全にやり切り、価値をしっかりお客様にお届けできたときに、その粗利を、貢献したPM・アーキテクト・営業の各ロールへ報酬として還元する仕組みを、評価制度に組み込みました。詳しい数字は控えさせていただきますが、それでも6〜7割ほどの高い粗利をしっかり確保できるビジネスモデルを組んでおり、プロジェクトに本当に貢献した人が報われる仕組みにしています。

数十兆円と言われる技術的負債の解消にAIで挑む

白石:そうしたSIサービスの中でも、SHIFTが特に力を入れているのがAIモダナイゼーションだと伺いました。これは、どのような事業なのでしょうか。

佐藤氏:レガシーシステムを、AIで新しいシステムへと作り替えていく事業です。日本には、1970年代半ばあたりから積み上がってきて、いまだに手をつけられていない莫大な技術的負債(古い設計や実装が負債のように蓄積し、改修や保守を困難にしている状態)があります。全体では数十兆円規模にのぼるかもしれません。日本の製造業や情報通信を支えてきた基幹システムに、それだけのものが眠っているんです。

[脚注]技術的負債:古い実装や設計が蓄積し、システムの改修や保守を困難にしている状態のこと

白石:「いま動いているのだから、そのままでいい」とはならないのでしょうか。

佐藤氏:それは難しいですね。いま、ゼロデイ攻撃(修正パッチが提供される前の脆弱性を突く攻撃)のようなものが、直近で非常に増えています。大規模な情報漏洩が、会社の経営を揺るがすほど大きく報じられる時代です。特別なことをしていなくても、システムを解析してみると、「いずれ攻撃されるであろう脆弱性」が数多く含まれている状態だとわかってきます。放置すればするほど、リスクは膨らんでいきます。

[脚注]ゼロデイ攻撃:修正パッチが出る前の未知の脆弱性を突く攻撃。

白石:問題は、セキュリティだけにとどまらないということでしょうか。

SHIFT 江口昌宏(江口)氏:柔軟性の問題も大きいですね。古いシステムは一枚岩の「モノリス」になっていることが多く、新しいやり方やビジネスの変化に、柔軟に対応できません。ビジネスを速く回したいのに、システムがその足かせになってしまうんです。だからこそ、いま作り替える意味があると考えています。

[脚注]モノリス:機能が一体化した分割しにくいシステム構造

AIでもわからない言語を国立国会図書館で解読、人力も駆使して負債を最新技術へ

白石:具体的には、レガシーをどうやって解体していくのでしょうか。

佐藤氏:まず、お客様からソースコードをいただき、それを「正」として解析するところから始めます。 RFPやRFIは起点にはしません。RFPには、どこかのベンダーの意図が入っていることが多いからです。私たちはソースコードという事実から提案します。

そしてAIとQAナレッジを組み合わせた当社独自のリバースエンジニアリング技術で、ソースコードから現状の課題や技術的負債、脆弱性、古いバージョンといったものをすべて丸裸にして、リスクや負債を可視化していきます。

[脚注]RFP/RFI:発注側がベンダーに出す「Request for Proposal:提案依頼書」「Request for Information:情報提供依頼書」のこと

[脚注]リバースエンジニアリング:既存のソフトウェアやシステムを解析し、その構造や設計情報、仕様を明らかにすること

白石:ソースコードを使うとは驚きです。

佐藤氏:お客様から安心してソースコードをお預けいただけるのは、これまでソフトウェアテスト事業でお客様との信頼関係を築いてきた当社の大きな強みでもあります。ソースコードと独自のリバースエンジニアリング技術とAIを組み合わせ、モダナイゼーションを進めていくわけです。

白石:すべてをAIで一気通貫、というのは難しいかと思いますが、いかがですか。

AI Professionals編集長 白石俊平

佐藤氏:おっしゃるとおりです。たとえばいま私たちが見ているものの中には、1970年代に開発された「NHELP(日立汎用簡易言語)」という言語で書かれたシステムがあります。これが、インターネットで調べても情報が出てこないうえに、AIに聞いても「わかりません」と返してくるんです。

[脚注]NHELP:日立のOS「VOS0/VOS1-S」(1978年出荷開始)に搭載された、専門家でなくても業務プログラムを作れる言語。参照:情報処理学会コンピュータ博物館

白石:AIでもわからないものを、どう対処するのでしょうか。

佐藤氏:国立国会図書館に寄贈されている当時のマニュアルを人力で読み込んで、AIに教え込もうとしているんです。こうした「未知の言語で動いているけれど、止めるわけにはいかないシステム」が、世の中には無数にあります。

白石:膨大なコードの中から、何を残して何を捨てるかを見きわめるのも、難しそうです。ここは、どう判断しているのでしょうか。

江口氏:ソースコードだけを見ても、何が使われていて何が使われていないかは、明確にはわかりません。ですから、実際の稼働データから動的に解析したり、現場に「これは使っている/使っていない」とヒアリングしたりして判断していきます。「レガシーの3〜4割はデッドコード(実際には使われていないコード)だ」とよく言われますが、実際にはそこまで多くないかもしれません。ただいずれにせよ、不要なものを削って母体を軽くしてから移すことで、新しいシステムの総量そのものを小さくできます。

[脚注]デッドコード:実行されず、動作に寄与していないソースコード

白石:お客様自身も、負債をどう捨てればいいかわからないケースも多いでしょうね。

佐藤氏:そうなんです。そこでまずアーキテクトがお客様のところに入り込んで、「いまはこういう状態なので、こういうアプローチが可能です」「松竹梅の3パターンではこうなります」というTO BE図(あるべき姿の設計図)を、1〜2か月かけて描いていきます。ここは、まだ人の判断が効いている工程なんです。

白石:そうして整理したシステムを分割して、最新技術へ移し替えていくわけですね。

江口氏:分割はしますが、最初から細かいマイクロサービスにするとは限りません。まずモジュール境界を引いた一体構成にして、独立して変えたい・独立してスケールさせたい単位だけを切り出す。運用体制が伴わないのに分割すると、かえって壊れやすくなります。
まずはモジュールの境界を引き直すところからです。分割は目的ではなく手段なので「ここは独立して変えたい」「ここだけスケールさせたい」という理由を言えない単位は、分けません。

[脚注]デッドコード:実行されず、動作に寄与していないソースコード

[脚注]マイクロサービス:システム・アーキテクチャにおいて、独立した小さなサービス群へ分割して開発・運用する構成のこと

AIの進化でどんな最新言語の実装も可能に

白石:移行先の言語もTypeScriptやPythonなど新しいものに刷新するんですか。

江口氏:私たちが使う標準フレームワークやボイラープレートはTypeScriptですが、お客様の事情に合わせてJavaやPythonにも対応できます。実は1年前であれば、「うちはこの言語でしか作れません」とお断りしていたかもしれません。AIコーディングのおかげで、いまは移行先の言語すら選べる時代になりました。 マイクロサービス化しておけば、あとから一部だけを差し替えることもできます。柔軟性が大きく高まるんです。

[脚注]ボイラープレート:多くのプロジェクトで共通して使う定型コードのひな形

白石:移行先が特定の言語に縛られない、というのは、預ける側にとっても大きいですね。

江口氏:大きいと思います。AIによって言語やフレームワークの制約から解き放たれて、「何で作るか」を目的から逆算して選べるようになりました。

SHIFT 江口昌宏氏

たとえば「周辺システムと同じ技術スタックにそろえて、保守できる人材を確保しやすくしたい」といった事情にも、無理なく合わせられます。以前は「作り替えたそばから塩漬けになる」という事態もありましたが、そうしたことを避けやすくなりました。AIで作業が早くなった分、何を作るか判断の重要性が増したと言えます。

白石:大きく作り替えると、かえって既存システムの動きが壊れてしまう不安もあります。そこは、どう担保しているのでしょうか。

江口氏:業務上重要な振る舞いから優先順位をつけて等価性を確認していきます。「全部が完全に同じ」を証明する手段は原理的にないので、どこまでを比較対象にしたかをお客様と合意したうえで進める、というのが実際のやり方です。面白いのは、解析の途中で「これは、いま動いているけれどバグっぽいぞ」というものが見つかることです。ただし勝手には直しません。「これはバグに見えますが、現場がこの挙動前提で運用を回している可能性があります」とお客様に返して、直すか温存するかを決めていただく。ここは判断を持ち帰る工程です。負債を返すついでに、システムの体質まで改善されます。 新旧をソースコードレベルでも仕様書レベルでも多段的に比較して突き合わせて、業務に必要な要件をしっかり担保します
業務上重要な振る舞いから優先順位をつけて等価性を確認していきます。「全部が完全に同じ」を証明する手段は原理的にないので、どこまでを比較対象にしたかをお客様と合意したうえで進める、というのが実際のやり方です。面白いのは、解析の途中で「これは、いま動いているけれどバグっぽいぞ」というものが見つかることです。それもあわせて直していくので、結果として以前より堅牢になり、変化にも強くなります。 ただし勝手には直しません。「これはバグに見えますが、現場がこの挙動前提で運用を回している可能性があります」とお客様に返して、直すか温存するかを決めていただく。ここは判断を持ち帰る工程です。負債を返すついでに、システムの体質まで改善されます。

白石:それをAIでスピーディーに最後まで構築することが大きな価値になるわけですね。国内企業に潜んでいる技術的負債のリスクや課題点について、そして高付加価値を生み出すエンジニア・PM像については、次の機会に詳しく伺いたいと思います。ありがとうございました。
(終)

プロフィール

佐藤 章太朗(さとう しょうたろう)
AIモダナイゼーション統括部 統括部長 兼 戦略営業統括部 統括部長
株式会社SHIFT

ソフトウェアの品質保証・テストを本業とするSHIFTにて、AIモダナイゼーション事業の推進責任者を務める。 あわせて取締役直轄の戦略営業統括部を統括し、新規事業・アライアンス・M&Aを通じた経営資源の最大化を担う。

江口 昌宏(えぐち まさひろ)
AIモダナイゼーション統括部 AIモダナイゼーションサービス部
株式会社SHIFT

20代で独立系SIerにて受託開発を経験後、30代の約10年間はフリーランスPMとして活躍。 40歳を機に組織だからできる仕事と裁量を求め正社員へ転向。LINEでのバックエンドエンジニア、AWSのソリューションアーキテクト、総合商社の子会社である医療系スタートアップで開発部長を歴任。 2025年11月SHIFTに入社。現在はAIモダナイゼーション部にて、ストラテジックアーキテクトを務める。

聞き手:

白石 俊平(しらいし しゅんぺい)
編集長
AI Professionals

Hajimari株式会社 シニアプロダクトマネージャー。 AI Professionals編集長として、AIエンジニア・テックリーダー向けメディアを運営。 元TechFeed創業者・CTO歴任。html5j創設、HTML5 Conference主催。