10月8日、Renato Losioが「Cloudflare Open Sources Decision Models for AI Agents」と題した記事を公開した。CloudflareがAIエージェント向けの「デシジョンモデル」をオープンウェイト(重みを公開)でリリースした件について詳しく紹介されている。
テキスト生成ではなく「選択」に特化したモデル
Cloudflareは、同社の「Birthday Week」期間中にClefを発表した。Clefは、自由なテキストを生成するのではなく、あらかじめ定義された選択肢の中からどれを選ぶかを判断することに特化したAIモデルだ。
通常のLLM(大規模言語モデル)はプロンプトに対して自由形式のテキストを出力するため、結果をパースして構造化データに変換する処理が別途必要になる。Clefはこのアーキテクチャを根本から変えており、入力として状態(state)と型付きの質問スキーマを受け取り、各質問に対して「各選択肢の確率」を1回のforward passで返す。出力パースは不要だ。
具体的なユースケースとして記事では、サポートリクエストのルーティング(担当チームへの振り分け)、エスカレーション、人間への判断委譲といった用途が挙げられている。AIエージェントがアクションを決定する際の「判断ロジック」として組み込む想定だ。
2モデル構成:27Bの精度と9Bの速度
Cloudflareはモデルを2種類リリースしている。
- Clef(27Bパラメータ):テキスト、JSON、画像、動画を処理できるマルチモーダルモデル。コンテキストウィンドウは64k。ベンチマークでの中央値レイテンシは209.3ms。
- Clef-Flash(9Bパラメータ):レイテンシ重視の小型版。中央値レイテンシは38.8ms。
いずれもCloudflareのエッジGPUインフラ上で動作することで、ネットワーク遅延を抑えた推論が可能だという。Cloudflareのグループプロダクトマネージャー Michelle Chen、プリンシパルMLエンジニア Alex Reneau、シニアエンジニアリングマネージャー Kevin Flansburgは次のように説明している。
エッジのGPUを活用できるため、ネットワーク遅延が低く、より速い判断が可能になる。Clefをエージェントの意思決定ホットパスに組み込み、Workers AI上のLLMと組み合わせてアクションを実行するような使い方ができる。
競合との差分:視覚処理と長いコンテキスト
Clefは、同カテゴリの先行製品であるTypesafe AIのJev System Oneとの互換APIを提供している。ただし機能面では差別化を図っており、Chen・Reneau・Flansburgの3名は次の2点を挙げている。
- ビジョンエンコーダを搭載しており、画像の分類も可能(Jevはテキスト分類のみ)
- コンテキストウィンドウが64k(Jevの32kと比較して2倍)
コミュニティの反応:「新カテゴリ」か「ただの分類器」か
Hacker Newsのスレッドでは、このカテゴリ自体の新規性について議論が起きている。
「新しいパラダイムではない。何年も転がっていた低hanging fruitだ。Typesafeがそれを初めて拾い上げて、大々的にマーケティングしただけ。」
— Jacek Złydach(Hacker News)
ベンチマーク数値についても懐疑的な声がある。なお、以下のコメントはClefではなく、先行製品であるTypesafeのベンチマーク手法そのものへの批判として投稿されたものだ。
「公開ベンチマークは操作しやすい。Typesafeの立場なら、自社のベンチマークを出して、有能な人たちをベンチマーク過学習に向けさせ、本当に使えるものを作ることから遠ざけるだろう。」
— _SebastianSosa_(Hacker News)
このカテゴリ全体に対するベンチマーク信頼性への疑問として、Clefにも間接的に当てはまる指摘と言える。
Redditのr/LocalLLaMAでも、精度スコアよりも実用的な信頼性を重視すべきという意見が出ている。
「生の精度スコアより、Clefが『分からない』と判断できるかどうかの方が気になる。偽陽性のコストが見逃しより大きいケースでテストして、データを変化させたときに確信度がどう崩れるかを見る。そこで高確信度を維持するなら、ベンチマークの数字には大した意味がない。」
— _bugra_sa_(Reddit)
入手方法とファインチューニング
Clefは現在、CloudflareのWorkers AI経由で利用できるほか、モデルの重みをHugging Faceからダウンロードすることも可能だ。
また、自社データを使ってClefを特定ワークロード向けにファインチューニングするサービスも発表された。現時点ではCloudflareのエンジニアが伴走する形で提供され、セルフサービスのプラットフォームは後続リリースとして計画されている(具体的なリリース日は未定)。Cloudflare自身も、サポートトリアージやボット分類といった用途向けに、自社の蓄積ラベルデータを使ったファインチューニングを進める予定だ。
詳細はCloudflare Open Sources Decision Models for AI Agentsを参照していただきたい。




