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Deep Dive

AIを「専任不在のまま」導入した企業のツケ — レッドチームやガバナンス専門家の求人が急増、年収中央値は2,100万円超

10月20日、Eric Gellerが「AI security hiring focuses on red-teaming, SOC orchestration and governance」と題した記事を公開した。AIの業務導入が加速する一方、セキュリティ体制を整えないまま展開を続ける企業が後を絶たない。SANS Instituteが2026年9月中旬の公開求人を分析した結果、AIセキュリティ職の求人が広範に存在することが明らかになり、AI/MLセキュリティエンジニアの中央値年収は14万ドル(約2,100万円)、求人数は850件超に達している。

10月20日、Eric Gellerが「AI security hiring focuses on red-teaming, SOC orchestration and governance」と題した記事を公開した。AIの業務導入が加速する一方、セキュリティ体制を整えないまま展開を続ける企業が後を絶たない。SANS Instituteが2026年9月中旬の公開求人を分析した結果、AIセキュリティ職の求人が広範に存在することが明らかになり、AI/MLセキュリティエンジニアの中央値年収は14万ドル(約2,100万円)、求人数は850件超に達している。


AIセキュリティ人材の需要、企業が「専任不在のまま導入」を進めた代償

AIの業務導入が加速する一方、多くの企業がセキュリティ体制を整えないまま展開を続けている。SANS Instituteが2026年9月中旬の公開求人を分析した結果、AIセキュリティ職の求人が広範に存在することが明らかになった。

SANS自身も報告書の中でこう指摘している。

「ほぼすべての大企業がAIを導入しているが、そのほとんどが専任のAIセキュリティスタッフを置いていない。結果として、シャドーAIが個人アカウント経由で社内に広まり、ガバナンスの枠組みはいまだ策定中であり、攻撃者は数秒でアクセスを引き渡し、数時間でデータを外部に持ち出している。」


最も求人が多い職種:AI・MLセキュリティエンジニア

求人数850件超、中央値年収14万ドル(約2,100万円)というのが、AI/MLセキュリティエンジニアの現在地だ。Amazon、Mastercard、PepsiCo、SpaceXといった企業が採用を進めている。

AIアプリケーションを狙うサイバー攻撃の増加と、従業員による未承認のAI利用(いわゆるシャドーAI)の拡大が、この職種の重要性を押し上げている。シャドーAIとは、企業のIT部門が把握・管理していないAIツールを従業員が業務に使用する行為を指し、情報漏洩やコンプライアンス違反のリスクをはらむ。


注目職種①:AIレッドチーム専門家

求人数は約100件、中央値年収12万4,000ドル。前週比で求人数が13%増と急成長している点が目を引く。

AIレッドチームとは、AIツールの脆弱性を攻撃者視点で探す役割だ。近年とくに問題視されているのがプロンプトインジェクションと呼ばれる攻撃手法で、悪意ある入力文(プロンプト)を通じてAIモデルの安全制約(ガードレール)を迂回し、意図しない動作や機密情報の出力を引き起こすものだ。LLM(大規模言語モデル)の業務利用が広がるにつれ、この種の脆弱性の報告件数が増加しており、専門的に検証・対策できる人材の需要が高まっている。Cloudflare、電気自動車メーカーのLucid Motorsなどが採用中だ。


注目職種②:AIガバナンス・リスク・コンプライアンスリード

求人数約430件、中央値年収14万6,000ドル。今回の分析で最も高い年収水準を示した職種のひとつだ。

SANSのデータでは、多くの組織がモデルへのアクセス制御を含む包括的なAIポリシーを持っていないことが示されている。それでも従業員のAI利用は広がっている——その"ギャップを埋める"役割がガバナンス専門家だ。JPMorgan Chase、防衛関連企業のLeidos、フードサービス企業のAramarkなどが採用を進めている。


成熟途上の職種と「将来の職種」

SANSのトラッカーは、現時点で求人数はまだ少ないが今後成長が見込まれる職種も整理している。

職種 求人数
AIセキュリティスペシャリスト 48件
AIサプライチェーンセキュリティエンジニア 93件
AI SOCオーケストレーター 36件

このうちAI SOCオーケストレーター(セキュリティオペレーションセンターにおけるAI活用の統括役)は、アラート疲れによるSOCアナリストのバーンアウトが深刻化する中で、重要度が増すとSANSは見ている。

さらに「近い将来に登場する職種」として挙げられているのが、ポスト量子暗号(PQC)移行スペシャリストとAIによるディープフェイクなりすまし対策スペシャリストだ。PQC(Post-Quantum Cryptography)とは、量子コンピュータによる解読に耐えられる次世代の暗号方式の総称で、NISTが2024年に標準規格を策定したことで企業・政府機関での移行対応が現実的な課題となりつつある。既存システムの暗号アルゴリズムをPQCへ置き換える作業は技術的に複雑であり、専任のスペシャリスト需要が今後生まれると予測されている。ディープフェイク対策スペシャリストも含め、両職種とも現時点での採用活動はほとんどないが、技術普及に伴い需要が生まれるとSANSは見ている。


AI以外の職種も拡大中

SANSのトラッカーはAI以外の領域もカバーしている。IT/セキュリティコンプライアンスアナリストは求人数450件超(前週比20%増)、IAM(アイデンティティ・アクセス管理)アナリストは180件(前週比51%増)と、いずれも急増している。


SANSのレポートは、従来のサイバーセキュリティキャリアからAIセキュリティ職へのキャリアパスも示しており、転職・スキルシフトを検討するエンジニアにとって参考になる内容だ。SANSのワークフォースリソースハブからトラッカーと報告書にアクセスできる。

詳細はAI security hiring focuses on red-teaming, SOC orchestration and governanceを参照していただきたい。