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Deep Dive

元GitHub CEOがプルリクエストを廃止した新Gitプラットフォームを立ち上げ — AIエージェントがコードを書く時代に、人間向けのレビュー体験はもう限界なのか

10月27日、Analytics India Magazineが「Former GitHub CEO Launches Git Platform Built for AI Agents」と題した記事を公開した。元GitHub CEO Thomas Dohmkeが立ち上げたAIエージェント向けGitプラットフォーム「Entire」が、プルリクエストという30年来のワークフローを根本から作り直そうとしている。AIがコードを書き、AIがレビューする時代に、人間向けに設計されたdiff・コメント・マージのループはいつまで機能するのか——Entireはその問いに正面から答えようとするプロダクトだ。

10月27日、Analytics India Magazineが「Former GitHub CEO Launches Git Platform Built for AI Agents」と題した記事を公開した。元GitHub CEO Thomas Dohmkeが立ち上げたAIエージェント向けGitプラットフォーム「Entire」が、プルリクエストという30年来のワークフローを根本から作り直そうとしている。AIがコードを書き、AIがレビューする時代に、人間向けに設計されたdiff・コメント・マージのループはいつまで機能するのか——Entireはその問いに正面から答えようとするプロダクトだ。


プルリクエストを「Trails」で置き換える

Entireが開発したGit Forgeプラットフォームの核心は、従来のプルリクエストを廃止し「Trails」に置き換える点にある。

背景として、AIコーディングエージェント(GitHub Copilot、Cursorなどに搭載されるコード自動生成AI)が生成するコード量は、人間が手動でレビューできる量をすでに超えつつある。従来のプルリクエストはコードdiff・コメント・CI結果を人間が読んでマージ判断するワークフローだが、エージェントが変更を生成し別のエージェントが繰り返しレビューするループでは、このワークフローが破綻しやすい。

Trailsはこの問題に対し、レビューエージェントがコードプッシュのたびにクラウドのサンドボックス環境内で独立評価を実行し、スコア・説明・修正案を返す仕組みを導入した。評価項目はセキュリティ、コード品質、人間レビューの要否など。未解決の指摘とスコアはレビュー画面の最上部に表示され、開発者が即座に判断できるよう設計されている。

マージ制御には「Gates」と呼ばれるルール設定機能があり、人間の承認やCIチェック通過を条件として設定できる。

Dohmkeはその設計思想をこう語っている。

「目標はシンプルだ。コーディングエージェントとレビューエージェントの間で十分なループが回り、安定状態に達したかどうかを判断するのに必要な情報をすべて提供すること。確信が高く、リスクが低く、すべての指摘が解消されたときにのみ、マージが行われるべきだ」

この問いこそが、タイトルの「もう限界なのか」という問いへの同社としての回答といえる。Entireの立場は明確だ——限界であり、だから作り直す、というものだ。

レビューワークフローの実行にはClaude CodeとCodexを使用。サンドボックス環境はDaytonaとE2Bが提供している。


89倍高速と主張する分散Gitホスティング

Git Forgeはリポジトリホスティング機能も持つ。米国・欧州・オーストラリア・インドでのホスティングに対応し、データ所在地(データレジデンシー)要件に合わせて複数リージョンへのレプリケーションが可能だ。

Entireの社内ベンチマークによると、1秒あたり418プッシュを処理できるとしており、GitHubの4.7プッシュと比較して最大89倍高速、Cursor Originと比較して6倍高速だと主張している。ただしこれは同社自身のベンチマーク数値であり、第三者による検証はない点に留意が必要だ。

既存のGitHubリポジトリをミラーリングして使う構成も可能で、GitHubをソースオブトゥルースとして維持しながらTrailsだけをEntire上で動かすこともできる。CI連携はBuildkiteとDepotと提携しており、ビルド・テスト結果はTrails画面に統合表示される。


セッションをまたいでコンテキストを保持する「Continuous Memory」

3つ目の機能Continuous Memoryは、AIエージェントがセッション終了時にプロジェクトの文脈を失うという既知の問題に対処するものだ。現状のコーディングエージェントはセッションをまたぐとそれまでの変更意図や依存関係の把握がリセットされてしまい、大規模コードベースでは作業効率と整合性の両面で問題が生じやすい。Entireはこの課題をインフラレイヤーで解決しようとしている。

2つのオープンソースツールで構成される。

  • Entire Graph:コードベースの定義・呼び出し元・型・依存関係をマッピングし、エージェントが関連情報を見つけやすくする。同社テストではトークン消費量を最大71%削減したとしている(なお、この数値も同社自身の計測によるものであり、独立した第三者検証は現時点では確認されていない)。
  • Entire Brain:そのマップと過去のエージェントセッション・プロンプトを紐付け、エージェントが以前のコード変更の意図を参照できるようにする。チームのバックエンドに接続することで、個人のマシンではなくチーム全体でエージェントの記憶を共有することも可能。

長期的なコードベース管理においてエージェントの「記憶」をどう設計するかは、各社が取り組み始めたばかりの領域だ。Entireがこれをプラットフォームとして提供する点は、個々のエージェントに依存する現状のアプローチと対照的な方向性といえる。


6,000万ドルを調達、「開発者ツール史上最大のシード」と自称

Entireは2026年2月に6,000万ドルのシード資金を調達、バリュエーションは3億ドル。ラウンドはFelicisがリードし、Madrona、MicrosoftのM12、Basis Setなどが参加した。同社は「当時の開発者ツール分野で最大のシードラウンド」と位置づけている。

Dohmkeは2021年にGitHub CEOに就任し、2024年初頭に退任した人物だ。在任中はGitHub Copilotの一般提供開始やGitHub Actionsの普及拡大など、AIと自動化を軸とした戦略を主導した。退任の経緯は公式には詳しく語られていないが、その直後にAIエージェント時代のインフラを丸ごと作り直すEntireを立ち上げた流れは、GitHubの内側で感じた課題意識の延長線上にあると読むこともできる。同社は独自の基盤モデルは開発せず、既存のコーディングエージェントを取り巻くインフラ構築に特化する戦略をとっている。


詳細はFormer GitHub CEO Launches Git Platform Built for AI Agentsを参照していただきたい。