10月27日、AWSが「Introducing AWS Coding Plugin for SAP ABAP, powered by Kiro」と題した記事を公開した。IBM ConsultingのSAPチームは開発時間を最大30%、開発後の欠陥を最大45%削減したと報告しており、SAPのABAP開発者向けAIエージェント「AWS Coding Plugin for SAP ABAP」がいきなり実績を引っ提げて登場した形だ。
「仕様書から書く」アプローチがABAPにやってきた
エンタープライズ開発者がSAP ABAPでコードを書く場合、複雑に統合されたシステムの中でビジネスロジックを実装・変換しなければならない。コードを書く前にそのビジネス要件を正確に理解することが、品質の鍵を握る。
AWSが今回リリースしたAWS Coding Plugin for SAP ABAPは、この課題に対して「Spec-Driven Development(SDD、仕様駆動開発)」というアプローチで応える。SDDは、コードを書く前にまず仕様書(スペック)を定義し、テスト可能な成功基準を明示してから実装に進む手法だ。このSDDをエージェント型開発に持ち込んだのがKiroで、AWSが2025年にリリースしたAIエージェント型IDEである。今回はそのKiroのエンジンをABAPの開発環境に統合した形となる。
Eclipseの中でエージェントと"ペアプロ"する
このプラグインが特徴的なのは、ABAPの開発環境であるEclipse(SAP ADT)の中に完全に統合されている点だ。別のIDEやWebブラウザに切り替える必要はない。
ワークフローの流れは以下のとおりだ:
- エージェントのチャットに要件を自然言語で記述する
- プラグインが質問を重ねて、ビジネス要件をまとめた「仕様書」を共同で作成する
- 接続されたSAPバックエンドから関連ABAPオブジェクトを特定し、実装計画を提案する
- エージェントが自律的に実装・テスト・反復を行い、完成時または要件変更時に開発者へ確認を求める
チャット内ではadt://形式のハイパーリンクが生成され、参照しているABAPオブジェクトに即座にジャンプできる。エージェントが対象オブジェクトをエディタで直接開いてくれるため、「隣に座っている開発者と一緒に作業している」ような体験に近い、と記事では表現されている。
また、MCP(Model Context Protocol)サーバーへの接続にも対応しており、チケットシステム・社内ドキュメント・メッセージングツールと連携してABAPチームのエンドツーエンドの開発ワークフローに組み込める。
実際の利用例:プロンプトの例
記事では、具体的なプロンプト例が紹介されている。
"テーブルZLOGISTICSに新しいフィールドを追加し、関連するバリデーションロジックを更新するスペックを書いてください。最近レポートZFREIGHT_PATHに加えた変更も考慮し、出力が添付のサンプルデータと一致することを確認してください。""パッケージZFINANCEのオブジェクトを確認し、abapdocアノテーションとインラインコメントでドキュメントを整備するスペックを作成してください。パッケージZSHIPPINGのハウススタイルに合わせること。""パッケージZSALESのクラスにユニットテストを追加し、ATC(ABAP Test Cockpit)を使ってクリーンコア準拠にリファクタリングするスペックを作成してください。最終的にユニットテストがすべてパスすることを確認してください。"
ECC環境からS/4HANAへの移行途上にあるチーム、あるいはクリーンコア化を進めているチームに対して、このプラグインは特に有効だと記事は述べている。ECC、S/4HANA、BTP(SAP Business Technology Platform) ABAP環境と幅広いABAPシステムに対応している。
導入実績と数字
IBM ConsultingのSAP AIリーダーであるDevraj Bardhan氏は、カスタムABAP拡張の開発時間を最大30%削減し、開発後の欠陥を最大45%削減したと述べている。
Mondelēz Internationalの継続的インテグレーションリードであるRajesh Shah氏は、わずか5時間でTMSコードのカスタマイズのレビュー、互換性確認、レポート生成を完了したと報告している。
セットアップと料金
インストール方法はSAP ADT(ABAP Development Tools、EclipseベースのSAP公式開発プラグイン)のインストールと同じ手順に従う。バックグラウンドでKiro CLIが起動し、MCP接続も自動設定される。Eclipseで既に設定済みのABAP接続をそのまま利用できるため、認証や接続の追加設定は不要だ。
動作要件は以下のとおりだ:
- Eclipse 2026-06以降
- SAP ADT 3.60以降
- Kiroサブスクリプション
Eclipse 2026-06は2026年6月リリースの比較的新しいバージョンであり、既存の開発環境によってはEclipse本体のアップグレードが必要になる点は確認しておきたい。
プラグイン自体は無償で提供される。利用料金はKiroのクレジット消費分のみだ。
詳細はIntroducing AWS Coding Plugin for SAP ABAP, powered by Kiroを参照していただきたい。




