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Deep Dive

人間の読者よりAIエージェントを優先する——AxiosやEveryが始めた「AIに向けて書く」コンテンツ戦略

10月27日、WIREDが「AI Agents Are Media's New Favorite Audience」と題した記事を公開した。AIエージェントを人間の読者に代わる「新たなオーディエンス」として捉え、コンテンツ戦略を転換しつつあるメディア企業の動向を報じている。人間ではなくAIに向けて書かれたコンテンツAIが要約してくれるなら、記事は誰のために書くのか――そんな問いが、メディア業界で現実のものになりつつある。AxiosやEveryといったメディアは、AIエージェントを主要な「受け手」として想定したコンテンツ配信の実験を始めている。これは、SEO対策やAIプラットフォームとのライセンス契約といった守りの一手ではなく、コンテンツの構造そのものを変える動きだ。背景にあるのは、オープンウェブのトラフィック減少と検索流入の縮小だ。Axiosの最高収益責任者(CRO)Jacquelyn Cameronは、「検索は縮小し、ハイパーパーソナライゼーションが急増している。LLMはニュース消費の中心になりつつある」と語る。

10月27日、WIREDが「AI Agents Are Media's New Favorite Audience」と題した記事を公開した。AIエージェントを人間の読者に代わる「新たなオーディエンス」として捉え、コンテンツ戦略を転換しつつあるメディア企業の動向を報じている。

人間ではなくAIに向けて書かれたコンテンツ

AIが要約してくれるなら、記事は誰のために書くのか――そんな問いが、メディア業界で現実のものになりつつある。

AxiosやEveryといったメディアは、AIエージェントを主要な「受け手」として想定したコンテンツ配信の実験を始めている。これは、SEO対策やAIプラットフォームとのライセンス契約といった守りの一手ではなく、コンテンツの構造そのものを変える動きだ。

背景にあるのは、オープンウェブのトラフィック減少と検索流入の縮小だ。Axiosの最高収益責任者(CRO)Jacquelyn Cameronは、「検索は縮小し、ハイパーパーソナライゼーションが急増している。LLMはニュース消費の中心になりつつある」と語る。


Axiosが仕掛ける「AIエージェント向けフィード」

9月のDigiday Publishing Summitで、Axiosは「Axios Direct」の立ち上げを発表した。これはAIエージェント専用のデータフィードだ。

外見はRSSフィードに近いが、人間が読むことは想定していない。ナラティブを省き、構造化されたテキストを優先する設計で、「記事の集合体というよりBloombergターミナルに近い」とCameronは説明する。

最初の2フィードは企業向けだ。

  • 1つ目:今秋すでに開始。Axios Pro DealsのサブスクライバーのAIエージェントが、M&A関連コンテンツにアクセスできる。
  • 2つ目:来年ローンチ予定。社内LLMのトレーニングデータとして機能する。
  • 3つ目:来年開発予定で、個人サブスクライバー向け。Axiosのレポートをユーザーのエージェントに直接配信する。

企業向けから始めるのは合理的な判断だ。実績のない実験的なプロダクトに対して、法人予算の方が許容度が高い。

Axiosの最高執行責任者(COO)Allison Murphyは、同社のスタイルがすでにAIとの親和性を持っていると指摘する。「クローラーにとって時間はカネだ。ページを4分の3スクロールして要点を探すような作りにはしたくない。その点でうちはすでに有利だ」。


Everyの「拡張可能な記事」という発想

テックメディア兼ソフトウェア企業のEvery(公式サイト)は、別のアプローチを取る。

Everyの創業者Dan Shipperが推進するのは、AIエージェントを読者の「拡張機能」として捉える考え方だ。

具体的には:

  • 記事中にプロンプトを埋め込み、読者が直接AIにコピー&ペーストして試せるようにする
  • 「Read With Claude」「Read With ChatGPT」ボタンを設置。クリックすると「まずタイトなサマリーを1段落、箇条書きで。その後深掘りを提案せよ」というプロンプトが起動する
  • 2年前には「拡張可能な記事(extendable article)」をローンチ。長文記事に加え、インタビュー音声・ニュース記事・YouTube動画のデータベースを付属させ、チャットボットで追加情報を引き出せる構造にした

最近公開したCodexに関する8,000字の記事(※元記事ではCodexの詳細な定義は示されていないが、プログラミング支援系AIツールを指すと文脈上読める)では、サブスクライバーのエージェントがデータベースを参照し、記事・ポッドキャスト・動画など複数の形式でコンテンツを再構成できる。箇条書きのサマリーを望む読者もいれば、インタビュー映像のショートフィルムを要求する読者もいる。

「ライターは常に、何を記事に入れるかを選択しなければならない。それが特定の読者にとって正しい選択かどうかは分からない」とShipperは言う。「AIがあれば、ジャーナリストがその選択をしなくて済む」。


収益化の問題は未解決

コペンハーゲン大学のコミュニケーション学教授Rasmus Kleis Nielsenは、AIエージェント向けパブリッシングの市場は「萌芽期にあり、極めて不均一」と評価する。価格設定や、将来的にAIエージェントがコンテンツとどう関わるかについては、大きな問いが残っている。

Axiosのフィードへのアクセスを含むAxios Pro Dealsの年間サブスクリプションは2,499ドル。Everyの年間サブスクリプションは288ドルで、Shipperはこれを「読者本人とそのエージェントのための料金」と位置づける。

「毎月全コンテンツを読むつもりはないかもしれない。でもエージェントがサブスクに含まれるなら、エージェントが『これは重要だ』と教えてくれればいい」とShipperは語る。

AIがコンテンツを吸い上げることがAxiosの収益に直接貢献するかは、まだ明確ではない。Nielsenは、読者がAxiosのホームページを訪問しなくても、AIの回答にAxiosのブランドが露出すること自体は、TikTokやInstagramへのコンテンツ配信と同様の「ブランド認知効果」があると見る。

MurphyはAIをオーディエンスの代替とは考えていない。「これはAIがオーディエンスなのではなく、AIが私たちのオーディエンスにリーチするためのツールだ」。ソーシャルメディア、ショートフォーム動画、ポッドキャストを経てきた変化の、次のフェーズとして捉えている。


詳細はAI Agents Are Media's New Favorite Audienceを参照していただきたい。