11月1日、CNBCが「Companies promised AI gains」と題した記事を公開した。AI投資のリターンが「期待」から「実測値」へと移行しつつある中、複数の大企業が2026年第3四半期決算でAIによる具体的な財務貢献を報告し始めた。「効果があるはずだ」という段階から「この四半期の数字に直接結びついた」と言い切れる企業が出てきたことは、AI投資の評価軸が変わる転換点として注目に値する。
AI投資のROIが数字で出始めた
スタンフォードHAI 2026 AI Indexレポートによると、企業のAI投資額は2025年に5,817億ドルに達し、前年比130%増という急成長を遂げた。Microsoft、Amazon、Google、Metaといったハイパースケーラー(超大規模クラウド・インフラ事業者)4社だけでも、今年のAIインフラ投資は合計7,000億ドルに上る見込みだ。
これだけの規模の投資が続く中、投資家が求めているのは当然「どれだけ儲かったか」という答えである。今回の第3四半期決算シーズンで、いくつかの企業がその答えを数字として示し始めた。
サンタンデール:AI貢献額を1億9,400万ユーロと明示
最も具体的な数字を出したのがスペインの大手銀行、サンタンデールだ。同行は2026年の最初の9ヶ月間で、AIイニシアチブが1億9,400万ユーロ(約2億1,600万ドル)のビジネス価値を生み出したと発表した。
CFOのホセ・ガルシア・カンテラはCNBCに対し、AIが低付加価値業務を削減することで従業員が高付加価値な仕事に集中できるようになったと説明した。
「収益とコストの両面に影響している。今四半期、AIがプラスの貢献をしたと直接的に結びつけられるようになった」
ただし同氏は「AIは銀行のあらゆるプロセスに組み込まれているため、どれだけがAI由来かを切り分けるのは難しい」とも述べており、帰属計算の難しさは率直に認めている。
ノバルティス、スタンダードチャータードも追随
スイスの製薬大手ノバルティスのCEO、ヴァス・ナラシムハンは、今四半期が「AIが実際にP&L(損益計算書、Profit & Loss Statement)を改善したと初めて実感できた四半期だ」と述べた。同社の第3四半期のコア営業利益は60億4,000万ドルで前年比10%増(固定為替レートベース)だったが、そのうちAI貢献分の定量化は示されていない。
製薬会社でのAI活用は主にR&D(研究開発)の生産性向上と、マーケティング・営業(M&S)部門での効率化に分かれており、ナラシムハンは「R&DへのAI活用でどこまで生産性が上がるか検証中」と述べつつ、M&S面では既に効果が出ていると語った。
英銀行スタンダードチャータードのCFO、マナス・コステロも「AIはビジネス全体のあちこちに現れている」と発言。同行の第3四半期の営業収益は固定為替レートベースで14%成長を達成した。
「収入がコストよりはるかに速いペースで成長しているオペレーティングレバレッジ(売上増加が利益増加に効率よく転換される構造)が見られる。これはAIツールを中核プロセスに展開し、効率的にスケールできたからだ」
カールスバーグ:効果あり、ただしスケールには未達
デンマークのビールメーカーカールスバーグのCEO、ヤコブ・アールプ=アンデルセンは、AI効果が「まだスケールには達していない」と正直に認めた。一方で内部プロセス、コスト効率、価格設定、マーケティング、サプライチェーンへの影響は確認されているという。同社の第3四半期売上は4.9%増だった。
Big Tech:AIが広告・クラウド収益を押し上げ
テック企業側では、Metaが10月21日の決算発表でAI投資が「実質的な増分広告収益」をもたらしていると言及し、同四半期の総売上は26%増を記録した。
GoogleはSearch広告収益の伸びが鈍化したものの、Google Cloud収益は第3四半期に約310億ドルと前年比2倍超に拡大した。
企業がAI投資のROIを言語化するのにかかった時間は約2〜3年だ。サンタンデールのように貢献額を単一の数字で示せる段階に達した企業がある一方、カールスバーグのようにスケールには未達と認める企業も存在する。業種・活用領域によってその成熟度にはばらつきがあるが、「数字で語れるかどうか」が今後の投資判断の分岐点になりつつある。
詳細はCompanies promised AI gainsを参照していただきたい。




