10月31日、pbxscience.comが「Is AI Search Making Google Ads Less Attractive? What Alphabet's Q3 2026 Results Show?」と題した記事を公開した。AlphabetのQ3 2026決算データをもとに、AI検索がGoogle広告ビジネスの収益性に与えている影響を詳しく論じている。
広告収益は伸びているのに、株価は急落した
2026年10月28日に発表されたAlphabetのQ3決算では、Google検索広告収益が前年同期比12%増の約633億ドル、広告収益全体も約10.5%増の約820億ドルを記録した。数字だけ見れば堅調だが、市場の反応は厳しかった。決算発表後の時間外取引でAlphabetの株価は最大10%下落した。
投資家が問題視したのは成長率の鈍化だ。前年同期の検索広告成長率は14.5%だったのに対し、今期は12%。アナリスト予想も下回った。この鈍化の原因として注目されているのが、「AI Modeクエリの収益性」である。
AI OverviewsとAI Mode — 二つのAI検索機能の違い
本題に入る前に、記事で頻出する二つの機能を整理しておきたい。
AI Overviewsは、通常のGoogle検索結果ページの上部に表示されるAI生成の要約機能で、すでに全ユーザーを対象に広く展開されている。検索クエリに対してAIが簡潔な回答を生成し、その下に従来のリンク一覧が続く形式だ。
AI Modeは、Geminiモデルをベースにした実験的な会話型検索機能で、ユーザーが複数のターンにわたって質問を深掘りできる。従来の「キーワードを入れてリンクを選ぶ」という検索体験とは根本的に異なり、AIとの対話を通じて情報を得る設計になっている。今回の決算で収益への影響が特に指摘されているのは、このAI Modeのクエリ増加だ。
核心:AI Modeは1クエリあたりの収益が低い
GoogleのチーフビジネスオフィサーであるPhilipp Schindlerは、アナリストとの決算説明会でAI Modeクエリの急増が業績に重くのしかかったと明言した。AI Modeのクエリは、従来の検索クエリより収益化レートが低いためだ。
ただし、彼はAI Modeだけを原因として挙げたわけではない。為替変動が第2四半期との比較で「最大の減速要因」であり、小売・メディアセクターの軟調さも影響したとしている。
一方でCEOのSundar Pichaiは、検索クエリの前年同期比成長率が5年ぶりの最速水準に達したと述べた。AI機能がユーザーの検索行動そのものを増やしているのは確かだが、その増加分を広告収益に転換できていないのが現状だ。
なぜAI検索は広告と相性が悪いのか
従来の検索広告モデルは、ユーザーが結果ページをスキャンしてリンクをクリックすることを前提に設計されている。AI生成の回答が質問に直接答えてしまうと、クリックする動機が薄れる。
さらに、AI Modeで多く発生するのは上流ファネル(Upper-Funnel)型のクエリだ。これは購買意欲が固まる前の情報収集段階の検索を指す。たとえば「電気自動車の仕組みを教えて」「育児休業の取り方は?」のような、まだ具体的な商品・サービスを探していない段階のクエリがこれにあたる。Schindlerはこれらを「インクリメンタルな需要を生む」と前向きに表現したが、購買に直結しにくいため、現時点では広告収益への転換率が低い。
広告主側の問題もある。現行の仕組みでは、広告主はAI OverviewsやAI Modeを個別にターゲティングすることができない。広告はあくまで既存のキャンペーン設定を通じて自動的に配信される形になっており、「AI Overview枠だけに出稿する」「AI Modeの会話にのみ絞る」といった細かい制御はできない。この透明性の低さが、一部のマーケターの予算コミットメントを慎重にさせている。
Googleの対策:「広告を表示できる場所」を広げる
決算発表と同日、Googleは収益化ギャップを埋めるための施策を発表した。
- AI Mode広告の国際展開:オーストラリア、カナダ、インド、ケニア、マレーシア、ニュージーランド、ナイジェリア、パキスタン(テキスト広告のみ)、フィリピン、シンガポールの10カ国に拡大。英国、ブラジル、メキシコは年内に追加予定。
- マルチターン広告(米国):AI Modeの会話形式での検索において、最初の質問だけでなくフォローアップ質問への回答にも「Sponsored」ラベル付きで広告を表示できるようになった。
Googleは「有望な結果が出ている」とし、AI Mode内のスポンサー掲載と有機掲載のクリック率がすでに同水準であると主張しているが、具体的な数値の開示はない。
広告主・ビジネス担当者への示唆
元記事では、現状への実務的な見方として以下の4点を挙げている。
- 「減速=撤退」ではない。支出は依然として2桁成長中であり、効率性の問題だ。
- コンバージョン率とROASをAI経由・通常検索で分けて計測することが重要になる。
- AI回答が一部のクリックを吸収するため、ブランド認知やオーガニックコンテンツの品質がより重要になる。
- AI Mode向けの広告フォーマットはまだ実験段階であり、現在のパフォーマンスが来年に通用するとは限らない。
これらの示唆が意味するのは、単純な予算の増減よりも「計測設計の見直し」が先決だということだ。AI OverviewsとAI Modeでは上述のとおりユーザーの検索意図の深さが異なり、コンバージョンまでのリードタイムも変わりうる。現状の計測基盤がAI経由のトラフィックを従来の検索流入と同一視したまま評価していれば、ROASの実態を見誤るリスクがある。Googleが個別ターゲティングの透明性を高めない限り、広告主側での計測強化が唯一の自衛手段となる。
まとめ
データが示すのは「広告主のGoogle離れ」ではなく、収益化モデルの構造的な課題だ。AI Modeがクエリ数を押し上げる一方で、1クエリあたりの広告収益は従来より低い。このギャップが縮まるかどうかは、Googleが展開する新しい広告フォーマットの実効性にかかっており、今後数四半期の決算が実質的な答え合わせになる。
詳細はIs AI Search Making Google Ads Less Attractive? What Alphabet's Q3 2026 Results Show?を参照していただきたい。




