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Deep Dive

Adobeが開発したAI画像編集エージェント、汎用モデルより専用評価データを与えた汎用モデルの方が賢い — 「何を見せるか」が「どう訓練するか」を上回る

11月1日、The Decoderが「Adobe is testing how well AI agents can use editing tools like a Photoshop professional would」と題した記事を公開した。Adobe ResearchとUC San Diegoの研究者が開発したAIエージェント「EditAgent」を取り上げており、Photoshopのプロのようにツールを使い分ける仕組みと、その評価実験の結果が詳しく紹介されている。

11月1日、The Decoderが「Adobe is testing how well AI agents can use editing tools like a Photoshop professional would」と題した記事を公開した。Adobe ResearchとUC San Diegoの研究者が開発したAIエージェント「EditAgent」を取り上げており、Photoshopのプロのようにツールを使い分ける仕組みと、その評価実験の結果が詳しく紹介されている。


汎用エディタだけでは4割以上が失敗する

EditAgentは、画像編集AIエージェントの典型的な問題を解決しようとしている。従来のエージェントは、あるステップが失敗しても同じツールで何度もリトライするか、別のモデルが目視で出力を評価するにとどまっていた。

その問題の深刻さは数字に表れている。600件の画像編集タスクを5人のプロが盲検で評価したテストでは、汎用エディタのFlux.1-Fill(Fluxの汎用編集モデル)が**42.7%**のケースで使えない結果を出した。同じエディタでリトライを増やしてもほぼ改善しなかったが、特化型ツールに切り替えることでそれらの失敗の約3分の2が解決できた。特にシャープニング、回転、ズーム処理で効果が顕著だった。

もう一つの発見が、反復改善 vs. 並列生成の比較だ。「前のステップの結果を次のステップに渡して段階的に精度を上げる」反復アプローチは、各ラウンドで誤差が蓄積するため品質が低下しやすい。一方、オリジナル画像から複数のバリアントを並列生成してその中から選ぶ方式では、プロが**78.5%**のケースで並列生成の結果を好んだ。また、評価パスの回数も半分で済んだ。EditAgentはこの2つの知見を軸に設計されている。


「検証データ」が汎用モデルを専用モデルより賢くする

EditAgentの核心は、ツール選択と評価の仕組みにある。

リクエストをステップに分解し、各ステップで汎用エディタと複数の特化型ツールを並列実行する。その後、VLM(Vision Language Model:視覚言語モデル)が全バリアントを一括で比較して最良のものを選ぶ。

VLMによる評価の精度を上げるために、各バリアントには検証レコードが付与される。内容は以下の3点だ:

  • 編集箇所のクローズアップ画像
  • 変更された領域を示すチェンジマップ
  • 輝度・色彩の定量的な統計値

たとえば「写真を少し明るくする」という指示に対し、汎用エディタは露出オーバーで色も暖色にシフトしたが、特化型ツールは仕様の範囲内に収まった——この差を数値が明示することで、モデルが正しく判断できる。

この検証レコードの有無による性能差は顕著だった。検証レコードなしでは、テストした7つのVLMのいずれも、人間の評価でファインチューニングされた専用モデル(EditScore等)に届かなかった。検証レコードありでは、7モデル全てが全ての専用モデルを上回った。Qwen2.5-72Bは**81.3%**の正答率を達成し、専用モデルのEditScore-72B(74.8%)を超えた。「モデルに何を見せるか」が「どう訓練したか」より効く可能性を示す結果だ。


編集の矛盾を検出する履歴チェック

EditAgentはさらに、各ラウンドの後に「後の編集が前の編集を上書きしていないか」を確認する。論文の例では、「日光をもっと入れる」という指示が、以前すりガラスにした窓を透明に戻してしまった。エージェントはこの矛盾を検出し、明るさを維持しつつすりガラスを復元した。


高コストだが、訓練データ生成源としての価値もある

EditAgentは通常の単一エディタと比べて約10倍の計算コストがかかる。また性能は組み込むツールの質に依存する。

ただし研究者はEditAgentを訓練データの生成にも活用している。検証済みの結果のみを保持することで、約2万6,000件の訓練サンプルを生成。そのデータでファインチューニングしたエディタは3つのベンチマーク全てで性能が向上した。対照的に、FLUXが直接生成した訓練データでファインチューニングするとFLUX自体の性能が悪化したという。

EdiValベンチマークでは、第3ラウンドのQwenバリアントがSeedream 4.0やGPT-Image-1.5といった商用モデルをわずかに上回った。

Adobeは2025年6月にPhotoshopやPremiereなどCreative Cloudアプリへのエージェント機能追加を発表しており、エージェントが適切なツールを選び出力を自己検証する能力は、研究段階を超えて製品レベルの課題でもある。

詳細はAdobe is testing how well AI agents can use editing tools like a Photoshop professional wouldを参照していただきたい。