11月3日、Dataconomyが「CrowdStrike to buy Fiddler AI and Dreadnode, launches AI kill switch」と題した記事を公開した。CrowdStrikeがAIセキュリティスタートアップ2社の買収と、AIエージェントを強制停止する「AI Kill Switch」の提供開始を発表した内容だ。
AIエージェントの「何をしたか」を証明できるか?
AIエージェントの企業導入が進む中で浮上しつつある問題がある。エージェントが何をしたか、なぜそう動いたかを、事後に説明できるか——という問題だ。規制当局や取締役会への説明責任が問われる場面で「モデルがそうした」は答えにならない。この課題意識が、今回の一連の発表の根幹にある。
CrowdStrikeのCEO兼創業者George Kurtz氏はこう述べた。
「規制当局や取締役会から『あのエージェントは何をしたのか』と問われたとき、『モデルがそうした』は答えにならない。Fiddlerはすべてのエージェントのフライトレコーダーだ。エージェントが何を、なぜ行ったかを正確に説明するオブザーバビリティを提供する。」
Fiddler AIはまさにこの問題に特化したスタートアップだ。CrowdStrikeは同社を買収し、Falconプラットフォーム内の新製品「Falcon Observe」として統合する。Falcon Observeは、AIエージェントの行動履歴の追跡、意思決定の説明、割り当てられたタスクの範囲内に留まっていたかの検証を可能にする。Fiddlerは自社の専用モデルがAI評価コストを最大98%削減できるとしている。なお、Falcon Observeの製品リリースは2027年度第4四半期を予定している(買収クロージングも同時期の予定。両社の買収金額は非開示で、資金調達は主にキャッシュ、一部は権利確定条件付きの株式が充てられる)。
デプロイ前にAIを「攻撃者目線」で叩く:Dreadnode
もう一方の買収対象Dreadnodeは、AIモデルやアプリケーション、エージェントをデプロイ前に脆弱性テストするプラットフォームを開発している。
その特徴は攻撃シナリオの網羅性にある。100種類以上の既知のAI攻撃手法(ジェイルブレイク、プロンプトインジェクション攻撃を含む)をモデル本体、エージェントの推論ループ、アプリケーション、MCP(Model Context Protocol)サーバーに対して実行する。
検出された脆弱性は以下のフレームワークにマッピングされる。
- **OWASP Top 10 for LLMs**(大規模言語モデル向けの主要脆弱性リスト)
- **MITRE ATLAS**(AIシステムへの攻撃手法を体系化したフレームワーク)
- **NIST AI Risk Management Framework**(米国国立標準技術研究所のAIリスク管理指針)
Dreadnodeチームは今後CrowdStrikeのCyber Superintelligence Labに合流する。Dreadnode製品のリリースはFiddler同様2027年度第4四半期の予定で、買収クロージングもFiddlerと同時期となる見込みだ。
Dreadnode CEOのBrad Palm氏はこう述べている。
「AIは従来のテストが想定していなかった形で失敗する。その失敗を見つけるのに最も適しているのは、攻撃者のように考える人間だ。」
「AI Kill Switch」:暴走エージェントへの最終手段
CrowdStrikeはFal.Con Europeカンファレンスで、Falcon Guardian製品へのAI Kill Switch機能の提供も発表した。
この機能は、権限を持つ管理者が以下を一括実行できる。
- 実行中のAIエージェントを即時停止
- 再起動の防止
- 社内ネットワークへのアクセス遮断
- 各操作のログ記録
現時点ではゲートウェイレベルでエージェントを停止でき、エンドポイント対応も近く追加予定とされている。CrowdStrikeの顧客企業EverPureのCISO、Rick Orloff氏は「エージェントが想定外の動作をした場合、AI Kill Switchによってセキュリティチームが最終的な決定権を持てる」とコメントしている。
また、Falcon GuardianはAnthropicとの統合も進んでおり、FalconセンサーがAnthropicのエージェント環境におけるコード実行仮想マシン内で動作する。現在macOS向けにベータ提供中で、Windows対応は11月中を予定している。
その他の発表
カンファレンスではそのほかにも複数の提携が発表された。Dell(AI Factory with Nvidia)、Dynatrace、CoreWeaveとのセキュリティ協定が結ばれている。Dellとの連携はオンプレミスAIワークロードへのセキュリティ適用、Dynatraceとはオブザーバビリティ領域での協調が主な狙いとみられる。
また、BT、Deutsche Telekom Security、Orange Cyberdefense、Telefonicaを含む15社がProject QuiltWorksに参加したことも明らかにされた。Project QuiltWorksはフロンティアAIモデルを活用して顧客がセキュリティリスクを特定・修正するのを支援するプロジェクトであり、通信事業者を中心としたグローバルなセキュリティエコシステムの形成を目指す取り組みだ。
詳細はCrowdStrike to buy Fiddler AI and Dreadnode, launches AI kill switchを参照していただきたい。




