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Ask the Professionals

【前編】「3年で26プロダクト」を全社AIで回す──Hajimari・岡田幸紀(こうき)CTOが明かす、AI駆動組織のつくり方

株式会社Hajimari執行役員CTO・岡田幸紀氏(こうきさん)が語る、全社AI活用と『3年で26プロダクト』への挑戦。面接フィードバックAIの自社開発、自走型組織のつくり方、1人1プロダクト体制まで、AI駆動組織の実践を明かす。

「AIでできることは可能な限りAIで。人間はAIにできないことに注力する」——この方針のもと、株式会社Hajimariは全社でAIをフル活用し、「3年で26プロダクト」という挑戦的なロードマップを実行している。語るのは執行役員CTOの岡田幸紀氏(以下、「こうき」)。フィンランドで離職率ゼロのチームを7年率い、Googleを経て現職に就いた同氏が、面接フィードバックAIの自社開発から、1人でプロダクトを回す体制、カルチャー醸成の具体策まで、現場のディテールを明かす。


全社でAIをフル活用する——「3年で26プロダクト」という挑戦

―― こうきさんが業務でどのようにAIを活用されているのかお聞かせください。

こうき:私たちHajimariはフリーランスの紹介事業を展開していますが、その紹介をより多く、そしてより精度高く行うために、業務プロセスの様々なところでAIを導入しています。本当にいろんなオペレーションでAIを使っていて、可能な限りAIでできることはAIで自動化・効率化する。逆に人間は、AIではできないことに注力する。その考え方のもと、かなり広範にわたってAIを導入しています。全社でAIのフル活用を目指していて、「AIアプリを3年で26個開発する」という、少し挑戦的な課題を設定して今進めているところです。26個の理由は、アルファベットがAからZまで26個あるからです。サービス名のイニシャルをAtlas、Bridge、Compassと言った具合にアルファベットを埋めていく様にすればゲーム性が出て楽しいかなと思いました(笑)。

―― 具体的には、どんなものを作られているのでしょうか。

こうき:たとえば「Atlas」という、人事面接・面談を収録するAIサービスがあります。面談を収録して、要約し、文脈を保持した上で、面接官の方に「もう少しこういうことを聞けばよかったですね」とか、「アイスブレイクの時間、最初の雑談をもう少し丁寧に設けた方がよかったですね」といったフィードバックを返すAIシステムです。これは自社で開発しています。

このように、AIを様々なプロセスで使い倒すし、場合によっては自分たちでアプリを作ったりもしている。そういう状況ですね。

―― これは技術部門だけではなく、営業や総務といった本部系の部門も含めて、全社員がAIアプリを活用して業務をしていくことを目指されている、ということでしょうか。

こうき:ご理解の通りです。今、社員が250人ぐらいいて、そのうちの5分の1、約50人が開発/エンジニアです。そして、エンジニア50名はもちろん、エンジニア以外の職種200名も含む、全社メンバーでとことんAIを使い倒します。そして使ったことを勉強会で情報共有していくので、ビジネス側にもAIにすごく詳しい人がどんどん誕生していっている感じです。エンジニア以上に詳しい人すらもいたりしますね。

こうきCTO自身のAI活用、肝は「ロジックはAIに頼りきる」

―― こうきさんご自身は日々の業務で、GeminiやClaude Code、Cursorなどをお使いとのことですが、どのような場面で使っていらっしゃいますか。

こうき:私の場合は、ミーティング資料の準備や、市場調査・分析でいつも使っています。あとは、会社の戦略や長期的な計画、組織を良くしていくためのプランを考えるときの壁打ち相手として、けっこう使っていますね。

―― ひとりで頭の中で考えるよりアイデアが出てくる、という実感はありますか。また、「ここはすごく使える」というケースと、逆に「ここはまだだな」と感じる部分があれば教えてください。

こうき:ロジックの部分に関しては、もうAIの方が圧倒的に人間を上回っていると思っています。理路整然と答えてくれるし、自分にはなかった観点を、データや情報を元に的確に言ってくれる。ここはもう、全面的に頼ってしまっています。

一方で、感情や共感、情緒の部分は、まだまだロボットだなと感じますね。たとえば伝え方や問い方は、イマイチだと思うことも。人の気持ちの汲み方みたいなものは、まだまだAIの方が劣っているかなと思っています。

―― 先ほどの面談フィードバックも人間のコミュニケーションが対象ですよね。「あの時ああすればよかった」という機微は、AIには難しいのでは、と伺っていて思ったのですが。

こうき:確かに「ここではそんなこと言わない方がいい」といった情緒的な判断は、AIが苦手とするところです。

ただ、その一方で「数字化できること」があります。たとえば30分の面接のうち、最初のアイスブレイクにかけた時間は、すべて数字化できますよね。実は上手に面接する人は、最初のスモールトーク、雑談に3分ぐらいたっぷり時間をかけているんです。一方、面接が苦手な方は、「今日はいい天気ですね」みたいな感じでさらっと始めてしまう。このように、トーク内容の構成比のような話になってくると、数値化できるし論理で分解できるので、AIは的確なアドバイスをくれるんです。

―― 苦手な情緒面でも、論理で分析できる部分から的確に支援していく。そうしたノウハウが社内に溜まってきている感じなのですね。

こうき:そう感じています。私たちは人材業、人事を生業にしている会社なので、「こういう面接が良い・悪い」というデータが、そもそも過去に非常にたくさん蓄積されているんですね。だからこそ、AIの良い部分を使う、という使い方ができている。自分たちの業界に関するノウハウが蓄積できているからこそ、なんじゃないかなと思います。

「自走型組織」とは何か——マネジメントが不要になる理想

―― CTOとして技術チームや社内チームをマネジメントすることも多いと思いますが、こうきさんは「自走型組織」を提唱されていますね。これは、どういう組織を理想とされているのでしょうか。

こうき:私が思う自走型組織とは、全員が主体的に行動するということです。組織を自分ごと化して、自分が良いと思ったことを真っ先にやる。逆に言うと、真っ先にやれる。正直、私のようなマネジメントの仕事はなくなってもいいと思っているんです。マネジメントの仕事がなくて、自分たちで判断してやってほしい。責任を持ってやってほしいし、それを自信を持ってできるようになってほしい。そうなれるように、常に技を磨いてほしいなと思っています。

―― そうした組織づくりとAI活用の両方の展開において、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。

こうき:そういう考え方やマインドセットを持ってもらうために、Googleとの交流を続けています。一流を目指すためには、一流の人を見るのが一番早いからです。具体的には、Googleの友人に頻繁に勉強会を開いてもらいます。主体的に動けて、Googleのエンジニアにも負けない、最も上を目指す「最上主義」のチームでありたい。それが、まず私が目指している自走型組織です。

―― その組織に、AIはどう関連してくるのでしょうか。

こうき:これからの時代は、「レベルが高いエンジニア」の定義が変わると思います。少なくとも「素晴らしい設計ができる」「素晴らしいコードが書ける」ことが条件ではなくなってきている。なぜなら、その分野はAIに置き換わっているからです。

AIをフルに使いこなしつつ、人間にしか提供できない価値を与えられる人——それがこれからのレベルの高いエンジニアだと思うので、そこを意識して動いてもらいたい。もちろん自分自身も含めてですけど。

―― 人間にしか提供できない価値とは何でしょうか。

こうき:具体的に言うと、業務プロセスの真ん中の部分は、もう全部AIが遂行するようになると思うんですよ。そうすると、価値が残るのは"端"です。最上流と最下流ですね。つまり、製造業などで引用されるスマイルカーブと同じ構図になるかと考えています。

サービスづくりで言うと、一番上流の源となるアイデアを出す、企画する、課題を定義する、ユーザーからヒアリングするということです。こういう上流は人間にしかできません。

もうひとつが出口です。AIが作ってきたものに責任を持ち、品質を担保して、確実にお客さんにデリバリーする。お客さんとの接点が残る入り口と出口の部分は人間にしかできないと思っていて、そこにフォーカスする形で考えています。

自走型組織を目指す施策の工夫

―― 自走型組織への試みが立ち上がって1年半ほどとのことですが、動き出すまでの体制づくりで工夫された点を教えてください。

こうき:ひとつは、先ほど申し上げた「一流に触れていただく」ことです。一流を目指すには一流に触れるのが一番。とにかくGoogleに勉強会をやってもらったり。外部との交流機会は、すごく意識して持つようにしています。当社主催のコミュニティイベントもそうですし、「エンジニアランチ」といって、毎月1回全員で集まって会社でランチを食べ、その場に外部講師として著名なエンジニアの方をお呼びして、その方のエンジニア半生を語ってもらう、ということもやっていました。

―― もうひとつの軸は何でしょうか。

こうき:環境の整備です。たとえば細かいことですが、もともとはエンジニアと非エンジニアの人たちが同じフロアで仕事をしていました。営業の方は電話がすごく多いので、エンジニアにとってはちょっとうるさかったりするんです。そこで、エンジニアフロアを別フロアに移したりして、開発に集中できるようにしました。

あとは最新・最先端のツールを会社からお金を出して使ってもらう。その辺は投資として捉えてやっています。

―― 内部のカルチャーや意識変化を促すところでは、何がターニングポイントになりましたか。

こうき:フロアを変えた環境面、最先端ツールの導入、それから合宿や社内での食事会ですね。私が好きというのもあるんですけど、社内のコミュニケーションの機会を、できるだけ多く持っているところだと思います。

「1人1プロダクト」はどこまで現実になったか

―― こうきさんはnoteで「AIを使いこなせば一人でプロダクト開発が実現できるのではないか」と書かれていました。これは現時点でどこまで可能になっているのでしょうか。

こうき:かなり現実化していると思っています。今現在、1人のプロダクトマネージャーが1人で開発しているプロダクトが、すでにありますね。

私が2025年1月に新しくジョインして、2027年12月までの3年間で26個のサービスを立ち上げ、保有する。今ちょうど2026年6月なので、ちょうど1年半が経っていますが、半分よりは進捗していて、15個のサービスがあります。

その15個のうち、たとえば「即プロ」というサービスは1人でやってくれています。AI Professionalも、ほとんど1人に近い形でやっていますね。

―― チームの場合は、どんな役割分担になっているのですか。

こうき:よくあるのは、プロダクトマネージャー、デザイナー、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニアの4人構成です。「1人でやっている」というのは、逆にこの4つや5つのファンクションを、AIを使って1人でやっているイメージですね。Atlasのメンバーは4人、Compassは2人、といった具合で、5人以上のプロダクトはほぼありません。だいたい2〜4人で、小さいものは1人でやっています。

―― 「1人1プロダクト」という理想に近づいている手応えは、けっこうある感じですか。

こうき:あります、あります。これからが楽しみです。

(続)

後編では、AI変革を促すリーダーシップのあり方や、AIが前提となる未来への対応力をどう身に付けていくか、AI時代のエンジニアへのメッセージを伺います。→後編は明日公開します!


プロフィール

岡田 幸紀(おかだ・こうき)
株式会社Hajimari 執行役員CTO

2000年より複数のテック企業で、北米・インド・ドイツとのソフトウェア共同開発をリード。2014年に単身フィンランドへ渡って開発拠点を新規設立し、離職率ゼロの海外チームを7年間運営、日本や各国のメディアに取り上げられる。2022年に日本へ帰国してGoogleにジョインし、日本企業のDX支援に携わる。パラレルキャリアとして複数のスタートアップのCTOを務めるなかで、現職に就任。信条は「『はたらく』とは『はた』を『らく』にすること」。