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AIエージェントを「動作中に」守る——HiddenLayerが1億ドル調達、ARR1年10倍成長の背景にある「モデルそのものが攻撃される」問題

9月3日、runtimewire.comが「HiddenLayer raises $100M to secure AI agents at runtime」と題した記事を公開した。AIエージェントの普及で「モデルそのものが攻撃される」リスクが現実のものになりつつある中、それを専門に防ぐレイヤーを構築するHiddenLayerがシリーズBで1億ドルを調達した。MicrosoftやPalo Alto Networksといった大手がこの領域に相次いで参入する今、独立系セキュリティプレイヤーが生き残れるかが問われている。

9月3日、runtimewire.comが「HiddenLayer raises $100M to secure AI agents at runtime」と題した記事を公開した。AIエージェントの普及で「モデルそのものが攻撃される」リスクが現実のものになりつつある中、それを専門に防ぐレイヤーを構築するHiddenLayerがシリーズBで1億ドルを調達した。MicrosoftやPalo Alto Networksといった大手がこの領域に相次いで参入する今、独立系セキュリティプレイヤーが生き残れるかが問われている。


ARRが1年で10倍、AIセキュリティ市場に何が起きているのか

AIエージェントの普及とともに、「モデルそのものを攻撃から守る」という課題が急浮上している。従来のセキュリティツールはサーバーやアプリケーションを守るために設計されており、機械学習モデルやLLMが持つ固有の攻撃面——プロンプトインジェクション、モデルファイルの改ざん、エージェントの操作——には対応できない。HiddenLayerはまさにこのギャップを狙っている。

今回の資金調達ラウンドはDelta-v Capitalが主導し、Ten Eleven Ventures、Morgan Stanley、MicrosoftのM12、Booz Allen Venturesが参加した。2022年のシード(600万ドル)、2023年のシリーズA(5000万ドル)に続く今回の1億ドルで、公表されている調達総額は1億5600万ドル以上となる。

創業の起点は「実際に受けた攻撃」

HiddenLayerの創業者3名——Chris Sestito、Tanner Burns、Jim Ballard——は、もともとAIベースのアンチウイルス企業Cylance(2019年にBlackBerryが買収)で働いていた。そこで彼らが直面したのが、Cylanceの機械学習モデルを標的にした推論攻撃(inference attack)だ。

推論攻撃とは、モデルの判定ロジックや決定境界を逆算・探索し、検知を意図的に回避する入力を生成する攻撃手法の総称だ。たとえばマルウェアの特徴量を微妙に変化させて「無害」と誤判定させる手口がこれにあたる。従来のシグネチャベースのセキュリティツールはこうした攻撃を前提に設計されておらず、モデル自体が攻撃面になるという問題はソフトウェアセキュリティの文脈では長らく見落とされてきた。3人はこの経験から「MLモデルはそれ自体が攻撃面になる」という問題意識を持って2022年に会社を立ち上げた。

製品のコアにあるのは、モデルが推論を実行している最中(ランタイム)の監視だ。現在は従来の機械学習モデルにとどまらず、生成AIや自律型エージェントにも対象を広げており、具体的には以下をカバーする:

  • プロンプトインジェクションへの防御
  • エージェントの操作(agent manipulation)の検知
  • 悪意ある外部ツール利用の監視
  • コーディングエージェントがファイル読み込み・コマンド実行・依存関係インストール・リポジトリ操作を行う際の監視(Agent Harness Security

さらに、オープンウェイトモデルのサプライチェーンリスクにも対応する。SestitoによればHiddenLayerは約50のAIファイルフォーマットをスキャンし、別のモデルを内部に埋め込んだファイルやラベルと中身が一致しないファイルを検出する。企業が公開モデルリポジトリからダウンロードしたファイルをそのまま本番環境に投入するケースが増えており、ソフトウェアサプライチェーンセキュリティのモデルファイル版として機能する。

急成長する数字と、見えてくる競争の構図

HiddenLayerがTechCrunchに明かした数字は際立っている。過去1年でARRが10倍以上に成長したという。具体的な金額は非公開だが、元記事では「数千万ドル規模」と表現されている。スタートアップのARR開示では$10M〜$90Mまで幅広く「数千万ドル」と表現されうるため額の断定はできないが、シリーズBで1億ドルを引き出せるレベルの数字として投資家が評価したことは確かだ。成長の90%以上が当該期間中に新規獲得した顧客によるものであり、既存顧客の拡張よりも純粋な市場開拓が牽引していることを示している。

顧客セクターは銀行、保険、製薬、テクノロジー、政府機関など50社以上の新規プラットフォーム顧客を獲得。米国の防衛・インテリジェンス機関とも契約しており、週間アクティブユーザー7億人以上のサービスを持つとされるフロンティアモデルプロバイダー(社名非公開)も採用しているという。この数字はChatGPTやGoogle Geminiを含む主要プロバイダーのオーダーと重なるが、元記事では社名は明かされていない。いずれにせよ、最前線の大規模プロバイダーが独立系のランタイムセキュリティ層を外部調達している事実は、「プラットフォーム自身では解決しきれない問題がある」というHiddenLayerの主張を裏付ける傍証になっている。

一方、競合環境は急速に厳しくなっている。

  • Noma Security:2025年7月にシリーズBで1億ドル調達、累計1億3000万ドル超
  • Zenity:2026年8月3日にシリーズCで1億2500万ドル調達
  • Palo Alto Networks:2025年7月にProtect AIを買収し、AIセキュリティをプラットフォームに統合
  • Cisco:Robust IntelligenceからFoundation AIグループを組成、2026年6月にエージェントID管理のAstrix Securityを買収

注目すべきは、競合の多くがプラットフォームへの統合・バンドルという形で市場を侵食しようとしている点だ。Sestitoは、Microsoft、OpenAI、AWSといったインフラプロバイダーがAIセキュリティ機能を自社プラットフォームにバンドルする可能性をTechCrunchに対して認めている。しかしHiddenLayerが主張する独自性は「特定プラットフォームに依存しない独立したコントロールレイヤー」であることだ。マルチクラウド・マルチモデル環境で複数のプロバイダーを横断して使う企業にとって、ベンダーロックインのないセキュリティ層には固有の価値がある——というのがHiddenLayerの賭けだ。

※編集部の考察:ただしPalo Alto NetworksやCiscoのような大手が同等の機能をセキュリティスイートに取り込んでいく場合、独立系が「機能の優位性」だけで差別化し続けるのは難しい。HiddenLayerが長期的に独立したレイヤーとして生き残るには、特定プロバイダーへの深い統合より「中立性」を売りにし続けられるか、あるいはエンタープライズの調達フローにどれだけ食い込めるかが鍵になりそうだ。

今回調達した1億ドルは、製品開発、エンジニアリング、研究、営業に加え、まずヨーロッパおよびEMEA地域を皮切りにした国際展開に充てる計画だ。大手が追いつく前に、独立したコントロールレイヤーとしての地位を固めるための時間を買う資金だと言える。


詳細はHiddenLayer raises $100M to secure AI agents at runtimeを参照していただきたい。